3. オーバーヒート(トラブル対処法)
- 症状
- 原因
- 対処法
- 予防法
オーバーヒートとは、エンジンが正常に機能するための適正な水温を超えて熱くなった状態です。原因としては、「冷却水不足」など「冷却システム」のいずれかが故障すると起こりますが、エンジンオイル不足などの「潤滑システム」に異常が起こった場合も発生することがあります。いずれもオーバーヒートの状態が進むと「シリンダーヘッドガスケットの破損」や、ピストンなどのエンジン内部に焼き付きを起こすなど、重大な損傷を与えることがあります。
オーバーヒートの症状が進行すると、「ガスケット破損」や焼き付きに至り、走行不能になります
シリンダーガスケットとは
シリンダーヘッドとシリンダーブロックの接合部にあり、シリンダー内の気密性を保つための部品です。
以前は軟鉄にアスベスト系の素材などでおおった複合タイプが採用されていましたが、アスベストの発ガン性の指摘を受けて、現在は金属の薄い板を重ね合わせた金属タイプが主流です。
オーバーヒートの原因としては、「冷却水不足」など「冷却システム」のいずれかが故障すると起こりますが、エンジンオイル不足などの「潤滑システム」に異常が起こった場合も発生することがあります。いずれもオーバーヒートの状態が進むと「シリンダーヘッドガスケットの破損」や、ピストンなどのエンジン内部に焼き付きを起こすなど、重大な損傷を与えることがあります。
ラジエター・各種ホース類からの冷却水の漏れ・不足
冷却水(ロング・ライフ・クーラント:LLC)の漏れやすい箇所には、「ラジエター本体」「ラジエターホース」「ヒーターホース」「ウォーターポンプ」などがあります。
ラジエター本体は、走行中に石などが当たって穴が空くことがあります。ラジエターホースやヒーターホースなどのホース類は、ゴムの劣化によってひび割れが発生することがあります。また、ウォーターポンプからは、回転部のガタによって水漏れが発生することがあります。
駐車中に冷却水が漏れた場合は、クルマの下に液だまりができることがあるのでクルマの下回りのチェックも必要です。エアコンからでる水と間違えがちですが、LLCには赤・青・緑などの色が付いており、特有の臭いもあります。走行中に漏れたLLCの異臭がする場合もありますが、濃度が薄くなっていたり、クルマ自体も車内の気密性が高くなっているので臭いで気づくケースは少ないようです。
オーバーヒートを防ぐだけでなく、エンジンが本来の性能を発揮できる温度を維持しています。
クルマのエンジンは、内部に冷却水を循環させることで冷却しています。ウォーターポンプによって冷却水を循環し、エンジン内で熱せられた冷却水はラジエターで冷やされます。
また、冷却水を適温に維持するために、サーモスタットとラジエターファンがあります。サーモスタットは冷却水の循環を調節し、ラジエターファンはラジエターに強制的に風を流すことで冷却水を冷やしています。
冷却水は、エンジン冷却システムになくてはならないものですが、求められる性能条件は主に2つあります。
ひとつは、不凍性です。クルマは、冬季の寒冷地での使用で、氷点下の温度にさらされます。その時に冷却水が凍ってしまうと、体積が膨張してラジエター内部やエンジンの破損につながります。
2つめは、防錆性です。冷却水は、エンジン内を循環しています。仮に冷却水が真水ですと、冷却水が循環する部分で使われている金属部品が錆びて循環を妨げ、冷却効果を低下させてしまいます。
この不凍性と防錆性を兼ね備えたものがロング・ライフ・クーラント(LLC)です。市販されているLLCには、水で薄めて使用する原液タイプと、あらかじめ濃度調整されていて、そのまま使用できるものがあります。濃度が適正でないと十分に性能が発揮されないので、ラジエターに入れる前に確認が必要です。
シリンダーヘッドガスケット破損
エンジンブロックが異常な高温になることが原因です。シリンダーガスケットがひび割れたり溶けることによって、シリンダーヘッドとシリンダーブロックの間に隙間ができてしまい気密性が保たれなくなります。シリンダーブロックとシリンダーヘッドの間に隙間があくと、混合気が十分に圧縮されないため、エンジンのパワーダウンを感じたり、エンジンオイルや冷却液の漏れにより、さまざまなトラブルが発生します。
高速道路でのトラブルが多い
JAFのロードサービス故障統計でも、高速道路での発生が目立ちます。高速走行を持続することによって、エンジンに高い負荷がかかることがトラブル発生の直接的な要因ですが、高速道路走行中は前方へ注意が集中するために異常に気付くのが遅れたり、異常に気付いてもすぐにクルマを止められなかったりして症状を悪化させてしまうことが多いようです。
冷却水用ファンの作動不良
速度の低下によって水温計が異常に上がる場合は、冷却用電動ファンの故障の可能性があります。
高速道路を走っていて渋滞に巻き込まれた途端に水温計の針が上がり始めたというケースがあります。
走行中はラジエターに走行風が当たって冷却されますが、渋滞に巻き込まれると走行速度が下がり、ラジエターに走行風が当たらなくなります。通常は水温が上がると冷却用電動ファンが作動して強制的にラジエターに風を送りますが、冷却用電動ファンに作動不良が発生しているとラジエターに十分な風が送られず、冷却効果が得られません。
それまでスムーズに高速道路を走行してきたのに、渋滞に巻き込まれたり、サービスエリアなどで停車した直後に、急に水温が上がるような場合は冷却用電動ファンの作動不良が考えられます。
このような場合は、冷却用電動ファンが作動しているか確認し、作動していない場合はエンジンを停止しましょう。
その他の原因
極寒の中でクルマがオーバーヒートするというのは意外かもしれませんが、毎年、豪雪地域でオーバーヒートによるトラブルが見られます。
この原因はクルマに吹き付ける雪がラジエターの前面を塞いでしまいラジエターに風が入らなくなるために発生します。
大雪のときなどは、ラジエターの前面が塞がれていないか、こまめにチェックしましょう。
また、雪のほかにも、走行中に紙やビニールなどがクルマの前面に付いてラジエターを塞いでしまい、オーバーヒートになってしまうケースも見られます。
対処法 その1
安全な場所で直ちに停車し、すみやかにエンジンを停止します。
状況によっては、「もう少し」と走らせたために、エンジンに深刻なダメージを与えてしまうことも考えられます。異常に気づいたら少しでも早く安全な場所で停車し、すみやかにエンジンを停止しましょう。
◆ ATTENTION ◆
水温計の針がHマークに至らなくても、Hマーク手前の目盛り付近まで水温が上がる場合は"オーバーヒート気味"です。このような場合は、直ちに停車し、水温が下がるまでアイドリング状態を保つようにします。この段階で対処できれば、シリンダーガスケット破損などの深刻な事態に至らずに済み、水温が下がれば走行できることもあります。
対処法 その2
ラジエター本体の冷却水量を点検します。
液量のチェック
エンジンの発する熱により冷却水は膨張するので、量が増えていてもリザーバータンクのHマーク以内であれば問題ありません。Hマークを超えて量が増えていたり、吹き出した形跡のある場合は、「ラジエターキャップの異常」か、「ガスケット破損」などが考えられます。逆に量がCマーク以下に減っている場合は、漏れ出した可能性が考えられます。
※オイルなどの混入がなく、漏れにより冷却水が不足している場合は水道水やミネラルウォーターでも代用可能です。しかし、ミネラル分の多い硬水は基本的に冷却水には向かないので緊急措置として考えましょう。
状態をチェック
冷却水が白濁している場合は、エンジンオイルなどが混入していることが考えられます。これは、「ガスケット破損」などで、冷却水とエンジンオイルの気密が保たれなくなったために発生します。
対処法 その3
エンジンオイルを点検します。
予防法 その1
水温計のチェック
オーバーヒートの症状は、第一に水温計に現われます。ですが、普段から水温計に注意を払っている人は意外に少ないものです。ロードサービスの現場でも、オーバーヒートを起こしてしまった方が、走行に支障をきたすまで水温計を見なかったということがしばしばあります。
オーバーヒートは、エンジンが異常高温になり、症状の進行とともにエンジンに深刻なダメージを与えます。水温が多少高くなったというような初期段階で対処できれば、"走行不能"という最悪の事態は避けられる可能性があります。
予防法 その2
冷却水量のチェック
リザーバータンク内の冷却水の残量が規定内にあるかチェックします。減っている場合は、冷却水を補充しますが、極端に減っている場合は、どこかから漏れている可能性があります。
ラジエター本体内の冷却水の残量をチェックする場合は、エンジンが冷えている状態で行います。極端に量が減っている場合は、液漏れやラジエターキャップの不良などが発生していることが考えられます。
ラジエター本体や各種ホースなどからの漏れチェック
まず、停車中のクルマの下回りを見て、クルマの下に冷却水が漏れていないかチェックします。液だまりができている場合は、まずどこから漏れているのかを特定します。液漏れの発生しやすい場所には「ラジエター本体」「ラジエターホース」「ウォーターポンプ」などが挙げられます。
ラジエター本体から漏れている場合は市販の漏れ止め剤、ホースから漏れている場合は専用の補修テープなども有効ですが、補修後は必ず整備工場で診てもらいましょう。自分で補修した後は冷却水の残量をチェックし、不足している場合は冷却水を補充します。
冷却水がじょじょに減っているケースでは、漏れている箇所の特定が困難な場合があります。その場合も整備工場で点検してもらいましょう。
予防法 その3
エンジンオイルの量チェック
点検は、エンジン各部に行きわたったエンジンオイルがオイルパン(オイルのたまる部位)に戻ってから行います。エンジン停止後5分以上待ってから行うのが目安です。
まず、エンジンオイルのレベルゲージ(位置はクルマによって異なりますが、車両取扱説明書に記載されています)を抜き、先端に付着しているオイルを拭き取ります。この際、拭き取りに使ったウエスの糸くずやホコリがレベルゲージに付かないようにします。
次に、レベルゲージを元の位置に差し込み、再度引き抜きます。レベルゲージの先端に付いたオイルが目盛りの間にあればOKです。レベルゲージを元の位置に戻して作業完了です。
エンジンオイルが極端に減っている場合は、整備工場で診てもらいましょう。
エンジンオイルに異物が混じっている場合は整備工場へ
レベルゲージからエンジンオイルを拭き取る際に、金属の粉などの異物がある場合はエンジン内部に異常があることが考えられます。この場合は整備工場で診てもらいましょう。