いろいろなモビリティ

いろいろなモビリティとは

すべての人が安全快適に、少ないコストで環境に優しい移動ができるよう、自動車や二輪車などに加えて、さまざまな需要・用途に応えて生まれたモビリティの展開が進んでいます。とりわけ自転車と自動車の間に位置し、いわゆるラストマイルを担う乗り物が多数誕生しています。こうしたカテゴリーを総称して、「いろいろなモビリティ」と呼ぶことにします。

電動キックボードのイラスト

電動キックボード

モーターとバッテリーを搭載し、電気の力で走行する電動モビリティです。2023年7月から改正道路交通法の一部が施行され、電動キックボードやそれ以外の車両で、一定の要件を満たすものは「特定小型原動機付自転車」と定義され、その運転に免許を要さないこととなりました。一方で、基準を満たさない車両については、引き続き、一般原付等として、運転には運転免許が必要です。

モペットのイラスト

モペット(ペダル付き電動バイク)

モーターを搭載し、自転車と同じようにペダルで漕ぐことができる電動モビリティです。
スロットルが備えられており、モーターのみで動かすことができるものと、電動アシスト自転車のようにペダルとモーターを併用して走行させるものがありますが、法令で定める電動アシスト自転車の基準を満たさないため、公道を走るためには、原付バイク同様の要件を満たさなくてはなりません(注)。
形状は、マウンテンバイクのような大型車両もあれば、折りたたみ自転車のような小型車両もあります。

(注)モーターの定格出力によっては道路交通法上の自動車に該当するものもあります。

グリーンスローモビリティのイラスト

グリーンスローモビリティ

電動車を活用した小さな移動サービスです。移動手段の確保や観光振興など、地域が抱える交通課題を解決するために生まれたサービスで、誰でも安心して利用できる点が特徴です。

電動ミニカーのイラスト

電動ミニカー

マイクロカーとも呼ばれ、軽自動車よりも小さい一人乗りの電動モビリティです。狭い場所でも走りやすく、原付よりも安定しており、近所への移動や配送業での配達等で活躍します。

シニアカーのイラスト

シニアカー

高齢者向けの一人乗りの三輪または四輪の電動モビリティです。道路交通法では歩行者扱いとなり、歩道を走行する必要があります。高齢者の移動手段として、買い物や近距離移動に向いています。

トゥクトゥクのイラスト

トゥクトゥク

東南アジアを中心に主にタクシーとして活躍している、三輪のモビリティです。日本でも観光地などで見かけることができます。近年では電動トゥクトゥクも登場し、ラストワンマイルなどを担う乗り物としても注目を集めています。

トライクのイラスト

トライク

「トライサイクル」の短縮形で、三輪のモビリティです。バイクのように風を切る爽快感が得られ、三輪構造のモビリティなので転倒の危険性は少なく、低速域の走行が容易です。

いろいろなモビリティの区分

  • 電動キックボード
  • モペット
  • グリーンスローモビリティ
  • 電動ミニカー
  • シニアカー
  • トゥクトゥク
  • トライク

電動キックボードは特定小型原付と一般原付等の2種類があります。車体の大きさや車体の構造によって区分けされます。一般原付等の場合は、免許が必要で車道のみ走行が可能になります。一方で、特定小型原付の場合は、16歳以上であれば運転免許が不要になり、車道に加えて自転車道等も走行が可能になります。特定小型原動機付自転車のうち、最高速度表示灯を点滅させること、6km/hを超える速度を出すことができないこと等の条件を満たす車両を特例特定小型原付といいます。特例特定小型原動機付自転車は、「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識等が設置されている歩道であれば歩道を走行できます。ただし、歩行者優先を守り、歩行者の通行を妨げる恐れのあるときは一時停止しなければなりません。

電動キックボード
特定小型原付 特例特定小型原付 一般原付等
最高速度 20㎞/h(構造上) 6㎞/h(構造上) 30㎞/h
免許 不要 不要 必要(原付一種、普通免許など)
年齢制限 16歳以上 16歳以上 16歳以上(原付免許に準ずる)
ヘルメットの着用 努力義務 努力義務 義務
ナンバープレート 必要 必要 必要
自賠責保険 必要 必要 必要
走行場所 車道・普通自転車専用通行帯・自転車道 主に歩道 車道(高速道路や自動車専用道路は不可)
二段階右折 必要 必要 必要
備考 その他、車体のサイズや定格出力によっても条件付けがある

危険予知トレーニング

「危険予知トレーニング」とは、交通安全教育において事故防止効果のある手法とされており、道路交通に潜む危険を事前に予測し、適切に対応することにより交通事故を未然に防止しようとするものです。
“安全”に危険な場面を覚えることで、予測する能力のトレーニングになります。疑似体験して危険予測のポイントを身につけましょう。

いろいろなモビリティ編その1

片側一車線の道路で、交差点を右折しようとしています。対向の電動キックボードも右ウィンカーを出しています。
このとき、あなたは何に注意しますか?

いろいろなモビリティ編その2

一方通行の道路を直進しようとしています。一時停止後、前進を始めます。
このとき、あなたは何に注意しますか?

特定小型原動機付自転車に関する実証実験

JAF Mate 2023年夏号 掲載

2023年7月から改正道路交通法の一部が施行され、16歳以上であれば無免許・ヘルメット非着用でも運転できるようになった特定小型原動機付自転車。特定小型原動機付自転車が街中で遭遇しそうな交通場面を再現し、走行速度やヘルメット有無によって衝突・転倒時の危険度はどう変化するのか検証した。

モペット(ペダル付き電動バイク)は、道路交通法上はモーターの定格出力に応じて「原動機付自転車」又は「自動車」として扱われます。そのため自賠責保険への加入義務やヘルメットの着用義務があります。自賠責保険は支払い限度額があるため、万が一交通事故を起こしたときのために、任意保険への加入も検討しましょう。

  モペット
法定最高速度 30㎞/h(原動機付自転車の場合)
免許 必要
年齢制限 16歳以上(原動機付自転車の場合)
ヘルメットの着用 義務
ナンバープレート 必要
自賠責保険 必要
走行場所 車道(型式認定を受け、TSマークが付いている駆動補助機付自転車は、歩道走行可能な歩道に限り歩道走行が可能)
二段階右折 必要(原動機付自転車の場合)
備考  

グリーンスローモビリティは車両の大きさによって、軽自動車、小型自動車、普通自動車の3種類があり、車両タイプとしてカートタイプや電動低速バスタイプがあります。移動手段の確保や観光振興など、それぞれの目的や用途にあわせて活躍しています。基本的には普通自動車免許で運転できますが、車体の大きさや乗車定員に応じては中型自動車免許や大型自動車免許などが必要になる場合があります。

  グリーンスローモビリティ
法定最高速度 (車両区分次第)
免許 必要(普通自動車免許、車体の大きさや乗車定員に応じて中型自動車免許または大型自動車免許が必要)
年齢制限 18歳以上(普通自動車免許、中型自動車免許又は大型自動車免許に準ずる)
シートベルト 不要
ナンバープレート 必要
自賠責保険 必要
走行場所 (車両区分次第)
二段階右折 不要
備考

自動車はサイズや出力などによって、道路運送車両法上の「普通自動車」「軽自動車」「ミニカー」「超小型モビリティ」に分けられ、0.6kW以下で乗車定員1名のみ、道路運送車両法で第一種原動機付自転車に区分されるのが電動ミニカーになります。一方で、道路交通法では普通自動車に区分されるため、普通自動車免許で運転可能です。道路運送車両法上で第一種原動機付自転車に区分されるため、高速道路や自動車専用道路等は走行できないので注意が必要です。

  電動ミニカー
法定最高速度 60㎞/h(規格出力0.6kW以下)
免許 必要(普通自動車免許)
年齢制限 18歳以上(普通自動車免許に準ずる)
シートベルト 必要
ナンバープレート 必要
自賠責保険 必要
走行場所 車道(高速道路や自動車専用道路は不可)
二段階右折 不要
備考 乗車定員は1名で積載量は90kg以下

シニアカーを通行させている者は歩行者とされ、運転免許は不要な高齢者向けの一人乗りの三輪または四輪の電動モビリティです。歩道や横断歩道、路側帯を通行しなければなりません。歩道と車道が分かれておらず、路側帯もないような道路においては、車道の右側端を走行します。免許が不要なため、免許返納後も操縦が可能なところも特徴の1つです。

  シニアカー
最高速度 6㎞/h(構造上)
免許 不要
年齢制限 無し
ヘルメット 着用義務は無し
ナンバープレート 不要
自賠責保険 不要(任意の保険もある)
走行場所 歩道や横断歩道、路側帯
備考 シニアカーを通行させている者は道路交通法では歩行者として扱われる

三輪車のような見た目をしていますが、側車付軽二輪に区分けされ、一般的には普通自動車免許で運転することができます。排気量や出力によって、高速道路や自動車専用道路を走行できない場合があり、事前に確認しましょう。

  トゥクトゥク
法定最高速度 一般道60㎞/h・高速道路80㎞/h ※出力や排気量によって、最高速度は異なる
免許 必要(一般的には普通自動車免許)※一般的には普通自動二輪免許では不可
年齢制限 18歳以上(普通自動車免許に準ずる)
シートベルト 不要
ナンバープレート 必要
自賠責保険 必要
走行場所 車道(高速道路や自動車専用道路などは不可の場合がある)
二段階右折 不要
備考  

一般に、三輪車のうち、車輪の左右間の距離が460㎜以上ある車両をトライクと呼びます。道路運送車両法の車両区分では側車付二輪車、道路交通法の車両区分では一般的には普通自動車に区分けされ、普通自動車免許で運転可能です。普通自動車に区分けされる場合、ヘルメットの着用は義務ではありませんが、転倒や飛び石などに備えてヘルメットを着用しましょう。高速道路も走行可能ですが、最高速度は80km/hなので注意しましょう。

  トライク
法定最高速度 一般道60㎞/h・高速道路80㎞/h ※出力や排気量によって、最高速度は異なる
免許 必要(一般的には普通自動車免許)※一般的には普通自動二輪免許では不可
年齢制限 18歳以上(普通自動車免許に準ずる)
ヘルメット 普通自動車に該当する場合、着用義務は無し
走行場所 車道(高速道路や自動車専用道路などは不可の場合がある)
二段階右折 不要
備考  

いろいろなモビリティに乗る時の違反行為と注意点

いろいろなモビリティを運転するうえで、注意すべき内容や禁止されている基本的な内容についてご紹介します。車両によって交通ルールが異なるので、どの車両区分に該当するか確認の上、楽しく安全に乗りましょう!車種ごとの詳細な内容については、運転する前に必ず取扱説明書や車両の販売店に確認しましょう。

乗る前に確認するべき違反行為

飲酒運転のイラスト

飲酒

飲酒は車を運転するために必要な視野を狭めたり、判断能力にも影響を及ぼします。そのため、飲酒運転は道路交通法で禁止されており、絶対にしてはいけません。シニアカーは歩行者扱いではありますが、飲酒後の利用は危険なため、やめましょう。

飲酒が運転に与える影響についての検証結果(JAFユーザーテスト)

二人乗りのイラスト

二人乗り

車両区分やドライバーの年齢など条件によって二人乗りができない場合もあるため、事前に確認しましょう。二人乗りができる場合でも、重量が増えるため、制動距離が伸びたり、バランスがとりづらくなったりと運転特性が変わります。また同乗者との会話等で運転への集中力が低下するため、十分に気をつけましょう。

運転中に携帯電話を使用しているイラスト

ながらスマホ

ながらスマホ等のながら運転は、文字や画面を見ることに集中してしまい、周囲の認識が難しくなり、交通事故につながる大変危険な行為なので絶対にしてはいけません。ハンズフリー通話は、合図の出し忘れや遅れ、停止が遅れるなど認知・判断・操作のタイミングが遅れる場合があるので注意が必要です。

乗る前に確認しておきたい注意点

ここで紹介するいろいろなモビリティは、電動ミニカーや電動キックボード、トライクなど同じタイプのなかでも道路運送車両法上では異なる種類のモビリティになることもあります。その種類によって、守るべき交通ルールがあるので、注意が必要です。運転する前に必ず取扱説明書や車両の販売店に確認しましょう。

覚えておきたい標識のイラスト

覚えておきたい標識

地名や方面の案内をする案内表示や、危険箇所の警告や注意のための警戒標識に加え、当てはまる車両区分の標識に従って通行する必要があるため、該当車両の規制標識、指示標識は覚えておきましょう。道路標識に附置されている補助標識では、車両の対象について示しているものもあります。

走行してはいけない場所のイラスト

走行してはいけない場所

高速道路等の自動車専用道路は原付、自転車、歩行者の通行が禁止されています。歩道は歩行者のための道路であるため、基本的には歩行者以外は通行できません。
それ以外も道路標識や路面標示などにより該当する車両が通行禁止となっている場所もあるため、事前に確認しましょう。

交差点の曲がり方のイラスト

交差点の曲がり方

シニアカーは歩行者扱いなので、交差点は歩道と横断歩道を使用して通行します。一方で一般原付の場合は、決められた条件の交差点でのみ二段階右折をしなくてはならないので注意が必要です。

乗り物によって違ういろいろなモビリティの見え方の違い

車道では自動車だけでなく、バイクや自転車に加えて、トゥクトゥクやトライク、電動ミニカー、グリーンスローモビリティ、電動キックボードなどいろいろなモビリティが走行します。歩道においては、歩行者だけでなく、シニアカーや条件を満たしている普通自転車や特例特定小型原付も走行します。モビリティによって、大きさや速さは異なりますので、多種多様なモビリティが通行する交通環境においては、それぞれのモビリティの特徴を知ったうえで通行することが大切です。
モビリティが大きくなるにつれて、死角は多くなります。電動キックボードや電動ミニカーなど比較的小さいモビリティは周りからは見えていると思っていても、死角に入ってしまい、見落とされる可能性もあるため、死角に入らないようにしましょう。