飲酒による運転への影響は翌日まで続くのか?(JAFユーザーテスト)
テスト実施日・諸条件
実施日 | 2022年11月8日(火)、11月9日(水) |
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テスト場所 | 日本自動車連盟(JAF)中央研修センター(東京都多摩市) |
テスト背景 | 重大な事故を招く飲酒運転。法改正や厳罰化などによって、飲酒運転による事故は年々減少傾向にあるが、根絶までには至っていない。そこで、飲酒が人体や運転にどのような影響を与えるのか、翌朝は酒気残りによる影響はないのかについて検証した。 |
テスト内容 |
6人のモニターに運転シミュレーターで市街地や山道などさまざまなコースを走行してもらい、飲酒が人体や運転にどのような影響を与えるのか、翌朝は酒気残りによる影響はないのかについて検証した。 テスト1 飲酒前と直後、翌朝における運転能力を比較検証運転シミュレーターを使い、実際の路上を想定したコースで運転能力を比較した。飲酒前と飲酒直後、翌朝(飲酒開始から10時間後)で運転ミスや事故の回数を検証した。 また、下記メニューを各回で実施した。 テスト2 飲酒後、視覚機能(視野の広さや目の動き)にどのような影響があるのか?飲酒による視覚機能の影響を調べるためにアイトラッキング(眼球の場所と向きからどこを見ているのかを表示できる装置)を使用し、飲酒前と飲酒直後、翌朝の状況をさまざまな交通場面を再現できる運転シミュレーターで検証した。歩行者や自転車、対向車などの見落としがないか、首を振って注視をしているか、危険な運転操作や対応できていなかった箇所の回数を調べた。 |
テスト結果
テスト1 飲酒前と直後、翌朝における運転能力を比較検証
飲酒前、飲酒直後、翌朝のタイミングにおいて、運転シミュレーターで運転したとき、以下のような結果となった。
テスト1 飲酒前・直後・翌朝における操作ミスや判断ミス等の回数の推移
テスト1 飲酒前・直後・翌朝における
ミス内訳と推移
- 飲酒直後は飲酒前と比べ、以下のような傾向が見られた。
- ハンドル操作が雑になり、壁にぶつかったり、まっすぐ走れなくなった
- アクセル操作がスムーズにいかなくなり、急加速したり、またブレーキ操作が雑になった
- 確認や判断ミスが多くなり、事故を引き起こす人もいた
- 飲酒直後だけでなく、翌朝も飲酒前と比べ、操作ミスや確認・判断ミスが増加した。
- 飲酒直後、モニター2から「飲酒前よりも視野が狭くなった。人を発見していたが、体が動くまでラグがあって事故になった」とのコメントがあった。
- 飲酒翌朝、モニター4から「呼気濃度は出なかったが、体にだるさが残っている。運転もいつもよりパフォーマンスが落ちている感じがあった」とのコメントがあり、他にも同様の体の不調を訴えるようなコメントが寄せられた。
テスト2 飲酒後、視覚機能(視野の広さや目の動き)にどのような影響があるのか?
運転シミュレーターで運転したとき、飲酒によって視覚機能がどのように影響されるのか検証した結果、以下のようになった。
【飲酒前】
【飲酒直後】
テスト2 飲酒前・直後・翌朝における見落としや反応できなかったミス等の回数の推移
テスト2 飲酒前・直後・翌朝における
ミス内訳と推移
- 飲酒直後、翌朝ともに左右やミラーの確認が疎かになり、死角から飛び出してきた子どもや自転車を見落とす傾向があった。
- よく見ていた箇所を可視化したところ(上写真)、飲酒前はミラーやサイドウインドウを含む、広い範囲を見て運転していたが、飲酒直後はミラーを見る頻度が減ったり、正面のみ注視するなど視野が狭まる様子が見られた。
- 飲酒前は首を振って目視確認をしていたが、飲酒直後や翌朝は前方の狭い範囲のみ目視確認していたため、危うくぶつかりそうになったり、事故に発展したりした。
まとめ
- 飲酒は車を運転するために必要な視野を狭めたり、判断能力にも影響を及ぼし、飲酒した翌日まで続く可能性がある。
- 「お酒に強いから大丈夫」「短い距離なら事故なんてしない」ではなく、お酒を飲んだら絶対に運転はしてはいけない。
- お酒を飲んだ次の日にアルコールが検出されなくても、眠気や体のだるさが残っていたり、体調が優れない場合は運転を控え、公共交通機関や運転代行などを利用したい。
- 周りの人たちがこれから運転する人に飲酒を勧めない・飲酒した人に運転させないことも重要である。
JAF Mate Onlineでも「JAFユーザーテスト」についての検証結果を掲載中!
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