オーバーヒート再現テスト(マイカー点検ノート トラブル対処法)

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実験1:冷却用電動ファンが回らないとどうなる?

実験内容

正常な状態では冷却用電動ファンが回りはじめる水温は93.4度からでしたが、このテストでは2基の冷却用電動ファンのコネクターを抜いて停止させました。計測は、Pレンジ、アイドリング回転という条件で行いました。

実験結果

電源コネクタをはずして、電動ファンを強制的に停止してみた。

水温は、1分ごとに6℃以上の上昇を続け、4分経過後の112.2℃を超えたあたりから、冷却液(ロング・ライフ・クーラント:LLC)がリザーバータンク内に吹き出し始めました。

5分経過時には120.6℃まで水温が上昇。沸騰したLLCがリザーバータンク内に吹き出し、あふれたLLCはリザーバータンクオーバーフロー排出用ホースから流れ出しました。さらにテストを続行しようとしましたがエンジン回転に滑らかさがなくなり、同時にゴロゴロ感のある異音が加わったため断念しました。2基ある冷却用電動ファンのうちの1基のコネクターを接続して冷却用電動ファンを作動すると、わずか2分後にはテスト開始時を下回る88℃まで下がり冷却用電動ファンの効果が再確認されました。

テスト開始3分で冷却水温度は112℃まで上昇。5分経過後にはメーターパネルの水温系も危険状態を示した。

もし、このままテストを続けていたら、間もなくエンジン焼き付きに至ることは間違いなかったでしょう。この結果、115℃ を境界として、これを超える水温をオーバーヒートということができるようです。また、実際の走行では、走行風によってラジエターに風が送られるため、本当はオーバーヒート状態なのに、ドライバーは目的地までまったく気が付かない……というケースも少なくないのです。

冷却用電動ファン停止状態での温度変化

[アイドリング、Pレンジ測定] (単位:土)

経過時間 冷却水温度 エンジンオイル
温度
ATF温度
1分 93.4 93.0 86.5
2分 101.8 95.6 86.5
3分 107.4 95.5 89.4
4分 112.2 99.0 91.0
5分 120.6 105.1 96.0
ここで冷却用電動ファンを1基動かしてみると…
1分 102.0 106.7 97.3
2分 88.0 100.1 95.5

※テスト車における参考値なので、メーカーや車種によって数値などは異なります。

実験2:ラジエターキャップが故障するとどうなる?

実験内容

プッシュ解放式ラジエターキャップの保持スプリングを外し、加圧機能を解除してテストを行った。

ラジエターキャップは、ラジエター内に圧力を加え、冷却液(ロング・ライフ・クーラント:LLC)の沸点を上げて冷却効率を高めています。テスト車のラジエターキャップの正常な開放圧力は0.9km/cm2でしたが、スプリングやパッキンの劣化により、この圧力が保てなくなった場合を想定してテストを行いました。
計測では、圧力が漏れるように加工したラジエターキャップを装着し、Dレンジでやや負荷をかけた状態にしてテストを開始しました。

実験結果

水温上昇で体積が増えた冷却液はリザーバータンクに送られ、水温低下によりラジエターに戻る。

テスト開始7分までは、冷却用電動ファンの冷却機能が働きLLCの温度は100℃以下を保っていました。しかし、ラジエターキャップの機能が低下しているため、エンジンが高温の時にリザーバータンクに送られたLLCが、エンジンが冷えても戻されずにラジエターに空気を吸い込んでしまいました。空気の混ざった状態でLLCが循環すると冷却効果が低下し、オーバーヒートに直結します。さらに、炎天下、エアコンのフル稼働、渋滞のノロノロ走行や冷却用電動ファン故障など悪条件が重なることを想定して、8分経過した時点で冷却用電動ファンを停止してみました。すると、90.1℃だった水温はグングン上昇し、 100℃を突破。そして、9分後には103.9℃にまで上がり、沸騰したLLCがリザーバータンク内に吹き出し、その後114.4℃まで上昇しました。この結果から、悪条件の中、何時間もの渋滞を強いられれば、十分にオーバーヒートになりうると予想できます。

温度の上昇にともない沸騰したLLCがリザーバータンク内に噴き出した。

 

ラジエターキャップ破損状態での温度変化

[1500rpm、Dレンジで測定] (単位:土)

経過時間 冷却水温度 エンジンオイル
温度
ATF温度
1分 85.6 86.6 89.5
2分 85.7 87.3 98.2
3分 87.9 87.8 101.5
4分 87.9 89.6 107.4
ここで冷却用電動ファンを1基止めてみると…
5分 89.4 90.3 103.5
6分 90.0 89.4 103.1
7分 90.1 90.4 104.5
さらにもう1基の冷却用電動ファンも止めると…
8分 98.0 91.7 106.0
9分 103.9 94.2 106.0
10分 109.1 95.4 101.4
11分 114.4 99.5 102.5

※テスト車における参考値なので、メーカーや車種によって数値などは異なります。

実験3:冷却水が足りないとどうなる?

実験内容

冷却装置の中心的役割を果たす冷却水(ロング・ライフ・クーラント:LLC)が不足した場合にどうなるのか……。このテストでは、規定量6.3リットルから約3分の1に相当する2リットルの冷却液を抜き取ってテストを行いました。LLCは、かろうじて循環できる量です。

実験結果

規定量の3分の1に相当する2リットルのLLCを抜き取ってテストを行った。

6分間のアイドリング・テストでは、開始温度が低いせいもあって、大きな温度変化はありませんでした。しかし、続く5分間の低速連続走行後の2~3分経過時にはエンジンオイルの温度が95.6℃から102.2℃へと6.6℃上昇。一方、水温も98.1℃から101.3℃と、3.2℃上昇しました。 空気が混じった状態でLLCが循環すると冷却効果が低下します。そのため、シリンダー周囲の温度が上昇し、さらにLLCが部分的に沸騰したため冷却が不十分になり、エンジンオイルの顕著な温度上昇に現われたものと思われます。

さらに3分間、負荷をかけてテストを続行すると、LLCの温度は103.4℃、エンジンオイルは102.5℃と逆転しました。これはLLCの方が、エンジンオイルより敏感に温度上昇に反応した結果といえます。 実際の市街地走行の条件はさらに厳しく、このような状態で走り続ければ確実にオーバーヒートに至り、ガスケット破損やエンジンの焼き付きにつながります。また、水温センサーの位置や不足している量によっては、水温計で異常を感知できないので注意したいところです。

冷却液不足での温度変化

経過時間 冷却水温度 エンジンオイル
温度
ATF温度
開始時 74.2 77.7 73.9
1分 80.9 79.6 76.2
2分 85.1 82.1 76.4
3分 85.8 83.7 76.4
4分 86.5 83.6 77.1
5分 85.6 81.8 76.8
6分 86.1 83.5 76.9
低速で5分間連続走行後、1分間走行するごとに計測してみると……
1分 96.1 94.6 83.4
2分 98.1 95.6 83.2
3分 101.3 102.2 83.4
6分 103.4 102.5 89.5

※テスト車における参考値なので、メーカーや車種によって数値などは異なります。