夜間走行時における歩行者の見え方(JAFユーザーテスト)

テスト実施日・諸条件

実施日 2021年7月14日(水)
テスト場所 自動車安全運転センター 安全運転中央研修所(茨城県ひたちなか市)
テスト背景 夜間は昼間に比べて視界が悪く、歩行者などの発見が遅れがちになる。車のヘッドライトがロービームかハイビームかによる影響もあるが、特に歩行者側の立場に注目し、服装の色の違いや反射材の有無でドライバーからの見え方に違いがあるかを検証した。また、実際の交通場面を想定し、ペットを連れた歩行者や自転車の見え方についてもテストを実施した。
テスト内容

横断歩道上に、歩行者に見立てたマネキンなどを設置し、ドライバーからの見え方を検証した。
ドライバーが運転するテスト車は横断歩道の手前にある停止線から150m離れた位置をスタート地点とし、
マネキンなどの対象に向かって時速20kmで走行。
テスト車のヘッドライト(LED)はロービームとハイビームの両方で見え方を確かめた。
ドライバーの見え方は、映像でも再現できるようカメラの露出を調整し、車内の運転席付近に取り付けた。
※道路運送車両法では、ハイビーム(上向き)を「走行用前照灯」、ロービーム(下向き)を「すれ違い用前照灯」と呼んでいます。

マネキンの配置と見え方
テスト1 服装の色によってドライバーから見える距離は変わるか?

服装は、反射材がついたJAF制服(上下)、黒、黒の上に反射材ベスト、
青、紫、赤、緑、黄、白のトップスをマネキンに着用させた。
それらのマネキンを横断歩道上に1体ずつ設置し、ドライバーから見えた時点での距離を計測した。
※JAF制服はあくまでも見えやすさの比較対象としての参考です。

テストで検証した服装
テスト2 ペットと一緒に散歩する歩行者やペットの見え方は?

横断歩道を渡ろうとしている歩行者とペットを再現し、反射材の効果を検証。
黒の服を着た人のマネキンを歩行者に、犬のマネキン(毛色は灰)をペットに見立てた。
反射材には人が着る反射材ベストと犬に装着する反射材つきの首輪とリードを用意した。

反射材の有無で比較

テスト結果

テスト1 服装の色によってドライバーから見える距離は変わるか?

服装の各色や種類について、ドライバーから対象のマネキンが見えた距離は以下のような結果となった。

※マネキンなどの対象から154m離れた場所をスタート地点としたため、白色・反射材を認識できる実際の距離は変わる可能性があります。

ロービームの場合、白と暗めの黒や青とでは約10mの差があったが、いずれも横断歩道の手前まで近づかないと認識することが難しかった。
ハイビームの場合、遠くから認識することはできたが色によってばらつきがあり、暗めの紫や黒と明るめの黄や白を比較すると約70mもの差があった。
反射材を装着した黒+反射材とJAF制服は、ヘッドライトの光が当たり反射していたため、ロービーム、ハイビームともに遠くからでも見えやすくなっていた。

テスト2 ペットと一緒に散歩する歩行者やペットの見え方は?

反射材がない場合、ロービームだと横断歩道の手前まで人と犬の存在を認識することができず、ハイビームでも大差はなかった。特に人は黒の服装で、かつ犬の毛色は灰だったため、夜間に遠く離れた場所から発見することは難しかった。
反射材がある場合、ベストやペット用品の首輪、リードについている反射材が役割を果たし、ロービーム、ハイビームともに早いタイミングで存在を認識できた。

ロービームでの見え方。反射材がないと暗闇に溶け込んで人と犬は確認できない。

ハイビームでも反射材がない場合は発見が遅れてしまうが、反射材を身に着けていると早めに気づくことができる。

まとめ

  • 昼間は鮮やかな赤色や緑色でも、暗めの黒色、青色、紫色と同じように、夜間だとドライバーから発見されにくくなってしまう。夜間外出時は、白色や黄色といった遠くからでも見つけられやすい服装を意識したい。
  • また、ドライバーにより早く認識してもらうためには、反射材を身に着けることが有効である。特に子どもやペットは道路への飛び出しなどといった予想外の行動をとる可能性もあるため、反射材のついた靴やペット用品を活用し周囲に存在を知らせると良い。
  • 夜間に運転するドライバーは基本ハイビームで走行し、歩行者や自転車の存在を早めに発見する心がけも重要である。一方、ハイビームは歩行者にとっても著しく眩しいものであるため、対向車や歩行者などを見つけた際はロービームへ切り替えるといった配慮も望ましい。