真夏の車内温度~車両の大きさによって差はあるのか?~(JAFユーザーテスト)
テスト実施日・諸条件
実施日 | 2023年8月28日(月) |
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テスト場所 | 東京都認可さかえ幼稚園(東京都練馬区) |
天候 | 14時までは曇っていたが、次第に雲が減り、晴れている時間が増えた。 最高気温:34.0度/最低気温:25.3度(気象庁より) |
テスト背景 | 2022年9月に園児がバスに置き去りにされ、亡くなる事故が起き、大きな社会問題となった。その後、2023年4月から送迎用バスなどへ安全装置を取り付けることが義務化された。特に体温を調節する機能が未発達な子どもや汗をかく機能が低下している高齢者など、真夏の車内では熱中症に注意が必要である。今回は普通自動車(ミニバン)とバスなどの大型車による車内温度の違いや熱中症の危険性について検証した。 |
テスト車両 | 送迎用バス(左)/ミニバン(右) |
テスト内容 |
テスト1 車内温度の変化について検証車内(空間)やダッシュボード、座席の背もたれ、手すりの4か所にセンサーを設置し、エアコン停止時からの温度を測定した。車内温度の変化については赤外線サーモグラフィを用いて測定。 テスト2 熱中症の危険性について検証熱中症指標(暑さ指数)を測定。送迎用バスの車内後方に設置し、エアコン停止時から暑さ指数を測定した。開始時の暑さ指数は送迎バス:17.8℃、ミニバン:18.5℃で開始。
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テスト結果
テスト1 車内温度の変化について検証
車両の大きさによって車内温度に大きな差は見られなかった。送迎用バス・ミニバンともにわずか1時間後には40℃を超える結果となり、最終的には車内温度は48℃まで上昇した。特にダッシュボードは57.8℃まで上層した。曇りの状態でも一定の温度までは上昇したが、日が出ている時間はさらに温度が上昇した。
- ダッシュボードについて:ミニバンは送迎用バスと比べ、フロントガラスの確度が浅く、より直射日光が当たっていたため、さらに温度が高くなったと考えられる。
テスト2 熱中症の危険について検証
開始時の熱中症の危険度を示す暑さ指数は送迎バス:17.8℃、ミニバン:18.5℃だった。
実験開始後、わずか3分後に暑さ指数は注意レベルに上昇し、10分後に警戒レベル、21分後には暑さ指数は厳重警戒レベルに達した。そして41分後、暑さ指数は危険レベルに達した。
熱中症のメカニズムに詳しい帝京大学医学部付属病院の三宅教授のコメント
「仮に人が車内にいれば、体温や吐く息などによって暑さ指数はこの実験結果より早く上昇するだろう。年齢や体格、体調、暑熱順化(暑さ慣れ)によって熱中症になる危険性は変わる。体が小さく、体温を調節する機能が未熟な子どもは大人と比べて暑さに対する抵抗力は弱く、多くの水分が必要になる。短時間でも車内に放置することは危険なため、絶対にやめてほしい」
まとめ
- 車両の大きさによって車内温度や熱中症の危険性に大きな差はなかった。しかし、曇りであってもわずか1時間後には車内温度は40℃を超え、暑さ指数は危険レベルに達した。短時間でも熱中症の危険性になる可能性が高い。そのため、天候や気温に関わらず、子どもを絶対に車内においていかないようにしましょう。
- もし、車内でぐったりした子どもや高齢者を見かけたらまず意識があるかどうか確認しましょう。その後、体を冷やし、水分や塩分を補給させましょう。緊急の場合は119番通報をすることが重要です。
- 熱中症対策として、水分やタオルなどを準備し、長時間の運転は避け、小まめに休憩をとるようにしましょう。
参考テスト
参考のテストとして以下のテストを実施した。
車外に聞こえやすい音について検証
4~6歳の3人のモニターにバスに閉じ込められたことを想定して、いくつかの行動で周りに助けを呼んだ際、どのように聞こえるのか検証した。
送迎バスから20m離れた園庭、60m離れた幼稚園の園舎の中の2か所でそれぞれ音を確認した。
車外に助けを呼ぶ方法として「窓をたたく」、「大声で叫ぶ」「防犯ブザーを鳴らす」といった行動をモニターの3人に実施してもらった。
結果
送迎用バスから20m離れた園庭で最も聞こえた音は防犯ブザーで鳴らした場合だった。しかし、モニターの親からは「思ったより声が小さく、意識していないと聞こえないと思う」、「他の園児たちの声に紛れてしまったら聞こえなくなってしまいそう」というコメントがあった。
60m離れた幼稚園の園舎で確認した場合、周りに助けを呼ぶ声や音は全く聞こえなかった
参考 車内置き去り防止安全装置
子どもたちが車内に置き去りになることを防ぐため、2023年4月より送迎用バス等へ安全装置の取り付けが義務化された。エンジンを止めると車内後部から車内確認を促すアナウンスが流れる「降車時確認式」と、車内に置き去りにされた子どもをセンサーによって感知すると周囲に知らせる「自動検知式」などがある。