闇夜に光って目立たせる反射材の秘密に迫る!(JAF Safety Light)
![](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/UzQMeS9f6jTV.png?mw=710&rev=327d604f13ec40d4bff2ac34858d3a01&hash=60660F5C100BE83DE678554E7629B3D8)
夜間、街灯に照らされているわけでもないのに、ドライバーの目には明るく光る道路標識。車から降りてみると、標識はそんなに明るくない。それってどうして? 「なぜ車からだけ明るく見えるの?」「そもそも、どんな仕組みで光っているの?」などなど、その秘密の鍵を握るスリーエム ジャパンさんにお邪魔しました。
反射材を生み出した会社・3M
馬車から車にモビリティの主役が変わりつつあった米国、一日中よく見える標識が必要とされていました。1920年代には、文字の輪郭にガラスやプラスチック製の「反射ボタン」と言われるものを埋め込んだ標識が登場します。しかし、これは、ボタンのせいでかえって文字が読みにくくなったり、ボタンが外れてしまったり、と視認性・耐久性ともに問題を抱えていました。
そんななか、3Mが反射材製品の開発に着手します。3M製の反射材製品は、両面テープの一方にガラスビーズを塗布したもの。紙やすりやマスキングテープで培った接着接合技術やコーティング技術を応用したものでした。こうして1939年のミネソタの高速道路で、初めて3Mの反射材シートを使った道路標識が立てられたそうです。
ということで、夜の道路標識がドライバーに明るく見える秘密、それは反射材のおかげなのでした。 長くなってしまいましたが、そんなわけで、反射材のお話の始まりです。
![スリーエム ジャパン本社受付前での集合写真](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/kYGU4yjUkgYT.jpg?mw=710&rev=8acfc2eb8a4642c39cdb87aeb8333a47&hash=6D3B33BE7BFE9365CD8817C60270C21B)
本社受付前には「3M」の大きなロゴボードが。左からトラフィックセーフティ・セキュリティ事業部の薄井弘之さんと山下正俊さん。それに広報ご担当の鵜飼春菜さん。
![スリーエム ジャパンパンフレット](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/D4FzvxabXh0j.jpg?mw=710&rev=c6313c7169b04f52bcc75425235a0c14&hash=F8519789CFFBCEA0377EE86230FA081C)
スリーエム ジャパンさんの会社案内で見つけた「元素周期表?」。3Mの技術領域を示すものなのだそうです。反射材だけではなかったのですね! とても覚え切れません。
あなたの身近でキラリ輝く反射材
![フラッシュを焚いた時と焚かない時の道路標識画像](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/gNXtGidMcsTf.jpg?mw=710&rev=23d6a9532eb645fca042ca3f1238ffca&hash=58ED2DCCD83945286A159F2BCA9CD38E)
『反射材』というと、あまりイメージが湧かないかもしれませんが、実は、とても身近なものです。たとえば、道端でよく見かける「止まれ」「学校あり」などの道路標識、これも反射材です。みなさんも、生活の中で何気なく目にしていますよね。自転車のペダルや後輪の部分にも、反射材が使われています。足を置く部分なので普段気に留めることはないかもしれませんが、ぜひ見てみてください。さらに、ランドセルやバッグ、スニーカーなどにもよく使用されています。実は反射材が使われているアイテム、持っていたりしませんか?
![反射材がついたベスト](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/g64JFmojXRuA.jpg?mw=710&rev=c1fc41377a9a447b82aa66aa4704afd0&hash=B8889B13838366E16AFD6D789B483F51)
ほかにも、「100m先工事中」といったような、道路工事現場で安全性を高める『保安工事用製品』や、トラックの後部などに備えられていて事故防止に貢献する『車両用製品』。交通整理を行う方が着ているベストや消防士の消防服、また、パスポートのデータページなど、さまざまな場所に反射材は使用されているんですよ。
![反射材が使われたパスポート](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/LZoUQ5B15wo6.jpg?mw=710&rev=baf5e9ae6efd4b0faadd12cfd72aab91&hash=CA46CB30B7C9A6C77928CF1AC29EA579)
反射材はなぜ光る?
それでは、どうして反射材は光り輝いて見えるのでしょうか? もちろん、反射材自身が光を出しているわけではありません。そもそも「反射」とは光を跳ね返すことを意味しますが、その光の跳ね返し方には、『乱反射』と『鏡面反射』、『再帰性反射』の3種類があります。反射材を使用している標識は、ヘッドライトの光を光源の方向へ戻す再帰性反射をするため、ドライバーから見ると明るく光って見えるのです。
![乱反射説明画像](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/EGBeICclYGn7.jpg?mw=520&rev=1bc49193baf64ae89a1180c257e59610&hash=DE883014E67AB203869DD52E436F52AB)
- 光源の明かりをあらゆる方向に分散して反射
- 一か所(ある箇所)での反射光の見える明るさは弱い
- 通常の物体で見られる反射
![鏡面反射説明画像](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/uLXQNh9tKGLj.jpg?mw=520&rev=0734c2aa19284fb28a8da21e8eb22ac0&hash=EBD41A1CCE594E1A35EBF5CA42092CBC)
- 入射角と反射角が同じになる反射
- 反射光は強いが、光源方向に戻らない
- 鏡で見られる反射
![再帰性説明画像](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/fhJkGX3wfnu4.jpg?mw=520&rev=11914fa681d34a638a718c46cad3223a&hash=748F1D95AD8381BF483ED12332060DA5)
- 光源に対して反射光が戻る反射
- 反射光は強く、かつ光源に戻るので、交通安全施設に多用される
再帰性反射を起こす仕組み
この再帰性反射を実現するには、ちょっとした工夫が必要です。通常は、鏡面反射や乱反射のように、入ってきた光は元の方向には戻ってきません。そこで、「光の屈折」を利用します。光は、ガラスなどを通過する際に方向が変わる性質があります。そこで、鏡面反射する光を曲げてあげて、入ってきた方向と同じ方向に戻すのです。現在の反射材では、ガラスビーズで光を屈折させる方法と、プリズムで光の屈折させる方法の2種類があります。
![ガラスビーズタイプ](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/D2UjivgzWSEh.jpg?mw=710&rev=8d301c14aaaa4b519ed6c6ffb0e3f859&hash=4512C44F815241884E35E191B2F58E05)
ガラスビーズタイプでは、図のように、まず光はガラスビーズに入るときに表面で屈折してからガラスビーズ内で鏡面反射します。そして、ガラスビーズを出るときに再び表面で屈折し、入射した光と平行に光が返る仕組みです。夜、車で走っているときに、猫の目が光る現象に遭遇したことはありませんか?これと同じ仕組みを利用しているのが、このタイプです。
![プリズムタイプ](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/9qrkKb2GHvTN.jpg?mw=710&rev=ed75d5513e514c92b93663ef042b0d1d&hash=96E97D321762B39DF2B278930B6FF852)
プリズムタイプは、プリズムのかたちに三角形のものと四角を組み合わせたもの(フルキューブ)の2種類があり、どちらのかたちも面で光を反射し、光源と同じ方向に光を返しています。フルキューブの方がより広角に光を返すことができるため、反射材として優れています。反射材は光源に光を返しますが、ヘッドライトと目線の高さは多少異なるため、より広い範囲に光が返る方が、ドライバーによく標識が見えるのです。
ガラスビーズタイプよりもプリズムタイプで作られた反射材の方が明るく、耐久性もあり、道路標識に利用するには格段にこちらの仕組みが向いています。
より明るく進化!反射材のヒストリー
米国で誕生した反射材は、「より明るく・広角に」と進化を続けてきました。「より明るく」は、少ない光でも効率よく反射するという意味。そして「より広角に」は、光源とドライバーの目線が離れていても、ドライバーに明るく標識が見えるようにする、という意味です。
![(普通反射式封入レンズ型)](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/zGRsl4qZm6sc.jpg?mw=710&rev=5bf31a9d0b3c41258a4b7a2a31e15b11&hash=EFACAEBA1FBF1065A5017C4AC2EA4ADB)
- 60年以上前に開発された反射シートの第1世代
- 再帰性反射するガラスビーズを無数に敷き詰めたもの
- 安価だが、耐久性や明るさが低い
![(高輝度反射式カプセル型)](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/Fdg6DCbeKKv0.jpg?mw=710&rev=028dd62286cc44aa97074e7a3c2cbe2d&hash=B94BA4EF46506A9209D91C47FDAACFB1)
- 「封入型」を改良し、プラスチックフィルムとガラスビーズの間に空気層を設け、プラスチックフィルムによる光の屈折が影響しないようにした
- 耐久性や明るさが封入型の3倍ある
- 現状、道路標識を含め広く普及している
![(超高輝度反射式広角プリズム型)](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/cFS0H0zyu7Dw.jpg?mw=710&rev=d2d72de2bf4a4e57a973db385d69c6ce&hash=7918E02BC887724320562270E89C71E8)
- カプセル型から更なる視認性向上を目指した製品で1990年代に入ってデビュー
- 脱ガラスビーズによりカプセル型と比較して反射性能は3~6倍
「高輝度カプセル型」と「広角プリズム型」を比べると、どれほど明るさや広角性が違うのか、実験して見せていただきました!
![実験画像1](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/QSLf0Za3TvuD.jpg?mw=360&rev=ac46b0303b9e4edb96c1d1f41ca1cb31&hash=635CD506FC2373E7A9B29A8098A778C7)
こんな装置とミニチュアを使って、「超高輝度広角プリズム型」と「高輝度カプセル型」の明るさを比較!
![実験画像2](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/uluxowVQwB6S.jpg?mw=360&rev=60d9cc11c85c4853a74560fbb436b183&hash=4A6E35354261BB0F7738434975B1AFCB)
「超高輝度広角プリズム型」の方がより明るく光っていることがわかります。
![実験画像3](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/WpBvLTuJvkyl.jpg?mw=360&rev=0ff28154299d432aa44a6254a05553ab&hash=A69FF9A0F0583523D12CF7EB7C1BE211)
今度は光の拡散具合をチェック。レーザー光線を発射すると、「高輝度カプセル型」ではこのくらいの範囲で光が反射されました。
![実験画像4](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/k1yJKO6ol7az.jpg?mw=360&rev=00776b241e7f4b6db3b599737439ee74&hash=C9AEC9E9C2014948A79EB60C7FDB771B)
「超高輝度広角プリズム型」で試してみると、より広い範囲に光が戻ってきました。こちらのほうが、ヘッドライトとドライバーの目までの距離が離れていても、ドライバーに明るく見えるということになります。
100年の叡智で反射材を使ってみよう!
夜間、ヘッドライトを下向きにした場合にドライバーが歩行者を視認できる距離は約26m~約38m。これに対し、反射材を着用している場合は、少なくとも約57mは視認性が確保されるそうです。※38mと57m。この距離の差は意外と大きいのです。たとえば時速60kmで走っている車の停止距離は約44m。事故になるかならないかを分けるのが反射材なのですね。
※数字は日本反射材普及協会より
さて、そんなわけで反射材について、100年の叡智を持つ3Mさんに教えていただいた『おすすめの使い方』をいくつか紹介しちゃいます!
![自転車使う反射材使用例](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/9t4f5BUe5b2C.jpg?mw=710&rev=9faf17ceb8444a9db4180fbb226eac03&hash=DEECB3E532922E2ED8C42A16BBB96072)
自転車は、車のボディのように光の当たる「面」が少ない乗り物。自転車側面からの被視認性も良くありません。そこで、車輪のスポークやフレーム部分に反射材をつけて被視認性をアップし、事故から自衛したいですね。
自転車屋さんなどで購入できます。
![駐車場に使う反射材使用例](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/b1b5hTCMtjUG.jpg?mw=710&rev=84025dcda7cb406e920d0573a1317f93&hash=ABC2C8D58A37C187A5E9FB7DF1045026)
車庫の背後にも反射材をつければ、どこが壁だか一目瞭然。暗い車庫だと、バックランプの明かりでも十分反射材は存在感を示してくれます。
![駐車場用の反射材](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/NxQ9LSz11vtB.jpg?la=ja-JP)
ホームセンターにはさまざまな種類の反射材が。用途に合わせて購入を。
![駐車場に使う反射材使用例](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/29LixgN3aUsh.jpg?mw=710&rev=20c1c82e40d4428f997b7cbaf26babc4&hash=0B14D5E234F079D09719D5CCF019F6CD)
ロービームでもドライバーに存在を感じてもらえるよう、反射材は低い位置につけるのが効果的。靴の後ろや裏につけると、動きも出てドライバーにもしっかりアピール!(でも靴の裏は取れやすいかも)
![ペットに使う反射材使用例](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/M9iCsAxQIvMQ.jpg?mw=710&rev=4a007a238635442081d640578866a1d0&hash=6B74148732444A464DDBC0DF36B7C72B)
反射材は、ロービームでも反射できるように、低いところにつけると被視認性はアップします。夜、ペットと散歩をする場合には、首輪などに反射材を貼っておくと、低い位置でペットの存在もドライバーに伝わって一石二鳥ですね。
![反射材が織り込まれたペット用リード](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/Iyxt8WMwAO1F.jpg?la=ja-JP)
反射材が織り込まれたリードも、ペットショップなどで手に入ります。
![まだある反射材のいろいろな工夫をご紹介!](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/tVbJSdZ3cd25.jpg?mw=1200&rev=b46d711f55494dc39eff0fb4d613525c&hash=64EB569F0E2A69846B9CFECC559ECE15)
反射材には、まだまだ視認性を高める工夫が施されています。ミニチュアの標識に実際に光を当て、その工夫の効果を実感してきました。
まずは、標識の色。同じ黄色でも、蛍光色を使ったほうが明るく見えますね。朝方や薄暮時など視認性が低下した環境で威力を発揮します。
![反射材画像1](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/KJTgt3HboFSo.jpg?mw=520&rev=662e99452f3d4b9ca62c1eefd8cc5f70&hash=6FC4478D06BEC67E4D22888697A72D9A)
![反射材画像2](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/10hjSoGSmTNe.jpg?mw=520&rev=e60968fd59e447b699b03f3276668e13&hash=F21020B5720A2F2F94DB1211E8EF09B8)
![反射材画像3](/-/media/1/2590/2610/2627/2628/Cj9R4CTOifMJ.jpg?mw=710&rev=08258ff274af431daa8d2e3eceacf50b&hash=9E9EDDDF4C939F3F3AEBCCC6BA392734)
2つ目がカーブなどでよく見る矢印マークの反射材。ただの平面でなく、凹凸をつけることによって、正面から来た光を効率よくドライバーに返すことができます。見比べると、違いは歴然ですね。