[A]野生動物と衝突してしまったときは、事故の発生を警察に連絡しましょう。
- シカやクマなど大型動物との衝突事故は、危険で人身事故の恐れがある。
- 警戒標識に注意し、野生動物に遭遇しても、急ハンドルは避ける。
- 任意保険を使うには事故証明が必要なので、警察には必ず通報する。
一般道で野生動物に遭遇したら
道路上で発生するクルマが関係する野生動物の死亡事故を「ロードキル」と言います。動物の生息域に道路が整備されたことが発生原因の主な理由です。野生動物が道路上に出没する危険が高い道路には、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令第2条および第3条にあるように、ドライバーへの注意喚起のために「動物が飛び出すおそれあり」という黄色地に黒線枠がついたひし形の警戒標識が設置されています。そこに描かれている動物マークはシカをはじめ、タヌキやサル、キツネ、クマなど、地域によって多種多様です。
こうした警戒標識を見たら速度を抑え、動物の飛び出しに注意して走行しましょう。なかでも、シカやクマなど大型動物との衝突事故は非常に危険で、状況によってはドライバーや同乗者が負傷する人身事故につながる恐れもあります。大型動物のロードキルが多発している地域では、自治体が事故の多い路線をウェブサイトで公開している場合もあるので、閲覧しておくと良いでしょう。
高速道路等で野生動物に遭遇したら
一般道同様、高速道路等も野生動物の生息域に建設されることも多いため、ロードキルが多発しています。2021年度にはNEXCO東日本管内の高速道路で約20,400件のロードキルが発生し、多くの動物が犠牲になっています。もっとも多いのはタヌキ、キツネなどの中型動物で全体の58%、次いで鳥類などの小型動物が40%を占めています。高速道路管理者側でも動物侵入防止柵の設置と改良、注意喚起の標識設置や道路構造物を利用した“けもの道”の確保など、さまざまな動物侵入防止対策を行っていますが、それでも万全とはいきません。一般道よりも速度が高い高速道路等では、動物との衝突や回避時に被害が大きく、深刻な事故につながる傾向があります。
警戒標識に注意し、もし野生動物に遭遇しても急ハンドルは避けてください。ブレーキで回避できない場合は、よほどの大型動物でない限りまっすぐ衝突するしかありません。事故件数の多いタヌキは夜行性動物なので、特に夜間から早朝は慎重に運転しましょう。上向きライトにすると遠方でも動物の目が光って発見しやすくなるので、状況によって上向きライトを積極的に使ってください。
野生動物と衝突してしまったら
野生動物との衝突は物損事故になりますので、道路交通法第72条にあるとおり、事故の発生を警察に連絡します。このときドライバーや同乗者が負傷、もしくはガードレール等の破損や後続車との衝突などが発生した場合は、併せてその旨も伝えます。任意保険を使うには事故証明が必要となるため、警察には必ず通報しましょう。
次に、衝突した動物が生きている場合は、衛生面や安全面から素手で動物に触らないよう注意してタオルやダンボール等で保護し、動物病院や保護施設に運びます。動物が暴れたりなど保護が難しい場合は、動物病院や保護施設に連絡して指示に従ってください。基本的に治療費はドライバーの負担になります(野生動物の無償治療を行っている施設や病院もあります)。動物が死亡している場合は、素手で触れないようにして、できるだけ交通の妨げにならないよう動物を路肩に移動させます。動物は道路管理者または自治体が処理します。前述の第72条にも、ドライバーは道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなければならないと記してあります。
なお、高速道路等や幹線道路で轢かれた動物を発見したときは、二次事故防止のためにも、道路緊急ダイヤル「#9910」に連絡してください。全国共通で、固定電話と携帯電話からの通話は無料です。野生動物との衝突事故で車両が破損した場合は単独事故扱いとなります。自賠責保険では物損は補償対象外なので、車両の修理には任意保険の車両保険を使うことになります。運転者や同乗者が負傷した場合は、人身傷害補償や搭乗者傷害で補償されます。対向車や歩行者に被害を発生させた場合も対物賠償責任保険や対人賠償責任保険などで補償されます。ただし契約内容によっては保険が使えない場合もあるので、詳細は保険会社に問合せてください。
2023年10月現在