[A]クルマの幅や長さが感覚的に把握できていれば、車庫入れや縦列駐車での苦手意識も克服できるでしょう。
- 前方の車両感覚は、運転席側窓から見える停止線の延長線で判断。
- 矢印を書いた付箋などを使えば、助手席側の車両感覚を補助できる。
- 巻き込み事故や接触事故を避けるため、内輪差や外輪差にも注意。
安全な場所を選び、繰り返しの練習が大切
車両感覚とは、クルマの前後左右の距離感のことです。クルマの周囲には死角があり、運転に慣れないうちは、車両感覚をつかむのが難しいと感じるかもしれません。ちょっとした感覚のずれから、コンビニやスーパーの駐車スペースからはみ出して周囲に迷惑をかけたり、狭い道で対向車とすれ違うときに戸惑ってしまうことがあります。そこで大切なのが、車両感覚をつかむための正しい練習方法です。クルマの幅や長さが感覚的に把握できていれば、車庫入れや縦列駐車での苦手意識も克服できるでしょう。
練習をするときは、歩行者やクルマに十分注意し、安全な場所で行ってください。ラインが引かれている駐車場のような場所ならば、そのラインを前後左右に目標にできるので、より練習しやすいでしょう。また、運転のできる家族や友人に協力してもらい、できるだけ一緒に練習するよう心がけてください。周囲の安全を確認できることに加え、運転を客観的に判断し、適切にアドバイスができる人がいたほうが早く上達します。
思い通りの位置にクルマが停められているかを確認するために、練習中は何度も乗り降りを繰り返すことになります。思わぬ事故を防ぐために、降車時は必ずエンジンを止め、サイドブレーキをかけ、オートマチック車ではギアをP(パーキング)ポジション、マニュアル車ではニュートラル以外のギアに入れてください。これは道路交通法第71条にも記されています。また同条では、車両を離れるときは、他人に無断で運転されることがないよう、必要な措置を講ずることも書いてあります。
前後の車両感覚を身につける方法とは?
前方の車両感覚を身につけるには、運転席で正しい運転姿勢をとり、停止線の延長線(ライン①)が運転席側の窓からどのように見えているかを確認します。乗用車の多くはサイドミラーのやや下あたりに見えるはずです。このサイドミラーと停止線の位置関係を記憶しておけば、停止線に合わせて止めることができます。
壁やブロック塀に向かい、ゆっくりと前進する方法もあります。最初はボディ先端から壁まで1mを目安に近づき、降車して距離を確認しましょう。うまくできたら、50㎝、30㎝と徐々に距離を縮めていきます。壁や塀との接触には、十分に注意してください。同伴者に壁との距離を確認してもらいながら、安全に練習を繰り返すとよいでしょう。この練習は、夜間にヘッドライトを点灯させて行うこともできます。壁や塀に近づくと、次第に照射範囲が小さくなるので距離感がつかみやすくなります。
夜間の練習は、後方の車両感覚をつかむときにも応用できます。クルマを壁や塀に向けてゆっくりと後退していくと、バックランプの照射範囲が壁に近づくほど小さくなります。この距離感を身につけましょう。ミニバンのように運転席からリアウインドウまでの距離が遠かったり、リアウインドウの面積が小さく後方が見づらい車種もあるので、後方の車両感覚は繰り返しの練習が大切です。
助手席側の車両感覚をつかむ方法とは?
車両感覚で難しいのは、助手席側の車端の位置を身につけることです。右ハンドル車ならば車体の左側です。運転操作に慣れていない初心者ならば、とくに道路左側に寄せて止めるのを苦手に感じる人が多いかもしれません。助手席側の車両感覚をつかむコツは、左前方の見え方を意識することです。
まず、駐車場の白線など目印になる線(ライン②)を決め、左側前輪のタイヤをその線の上に乗せて、クルマが線と平行になるようにします。次に正しい運転姿勢をとり、運転席からライン②の見え方を確認しましょう。車種や運転者の体格によって異なりますが、乗用車ならばボンネットの中央あたりにライン②が見えるはずです。この見え方を覚え、道路左側に寄せるときの目安にして練習を繰り返します。
矢印を書いた付箋やシールを使い、運転を補助する方法もあります。付箋をダッシュボードの上に置き、クルマを左側に寄せます。次に、フロントウインドウ越しに見るライン②と、付箋の矢印の延長線が重なるように調整します。このとき運転者が前かがみになったり、座席位置を移動させないように注意しましょう。付箋の位置が決まったら、テープなどでダッシュボードに固定します。付箋の矢印の延長線をクルマの左前輪が通る位置と意識すれば、きちんと左に寄せることができます。
内輪差や外輪差ってなんですか?
ハンドルを回した状態でクルマを前進させると、前輪よりも後輪のほうが内側を通過します。この軌跡の差を「内輪差(ないりんさ)」と呼びます。内輪差はハンドルを多く切るほど大きくなります。また、ホイールベース(前輪と後輪の中心軸の距離)が長いクルマほど、内輪差が大きくなることも覚えておきましょう。内輪差を意識しないで交差点を曲がると、ガードレールや塀などにボディの側面をこすったり、後輪が縁石に接触したりすることがあります。曲がり角に歩行者などがいれば、巻き込み事故を起こす危険もあるので十分に注意しましょう。
内輪差の感覚を身につけるときも、繰り返しの練習が大切です。まずは周囲の安全を確かめてクルマを止め、ハンドルを左右どちらかへいっぱいに切ります。次に、クルマをゆっくり前進させてみましょう。サイドミラーを下に向け、後輪の動きを確認します。パイロンなど柔らかい障害物を曲がる方向のドア付近に置くと、より前輪と後輪の軌跡の差がつかみやすいでしょう。同伴者に運転してもらい、車外から見て内輪差を実感する方法もあります。
また、後退するときには、クルマの前輪が後輪よりも外側を通ります。この軌跡の差を「外輪差(がいりんさ)」といいます。外輪差も車庫入れや縦列駐車を行うときに大切になる車両感覚なので、しっかりと身につけておきましょう。
2024年05月現在