[A]最高速度が上がったからといって時速110㎞で走行する必要はありません。状況に応じた安全な速度で走りましょう。
- 試行期間に安全性などを検証し、時速120㎞への最高速度の引き上げを検討。
- 十分な車間距離を保ち、進路変更の際は周囲の安全をしっかり確認。
- 渋滞最後尾への追突の危険が高まるため、速度の出し過ぎに注意。
最高速度を引き上げる目的と最高速度が引き上げられた区間は?
2016年3月、警察庁は高速道路の速度規制を時速100㎞から120㎞へ引き上げる方針を発表しました。最高速度の引き上げによって、実勢速度(クルマが実際に走っている速度)と規制速度の隔たりを改善するとともに、適正な実勢速度が保たれることで、高速道路での安全と円滑な交通が確保されると考えられています。
そして、新東名高速道路は2017年11月から、東北自動車道は12月から一部区間で試験的に最高速度が時速110㎞へ引き上げられています。試行区間は新東名高速道路の新静岡IC~森掛川IC間(約50㎞)と、東北自動車道の花巻南IC~盛岡南IC間(約27㎞)です(2018年2月時点)。渋滞の発生が少ない、死傷事故率や1㎞当たりの交通事故率が低いなどの理由から、両区間が試行対象に選ばれました。試行期間は最低1年間で、安全性などを検証したうえで時速120㎞までの引き上げや、他の高速道路への導入が検討されます。
大型トラックなども最高速度が引き上げられるの?
最高速度の引き上げはすべてのクルマに適用されるわけではなく、これまで最高速度が時速100㎞になっていた車両が対象です。大型トラックやトレーラーなどは、これまでと同じ時速80㎞に据え置かれました。大型トラックなどが対象から外れたのは、貨物の状況によって走行が不安定になることや、事故発生時に被害が重大化しやすいことなどが理由です。
試行区間の標識は、最高速度が時速110㎞に引き上がる車両用と、最高速度を時速80㎞のままで据え置く車両用の2種類が設置されます。それぞれの速度標識板の下には、対象車両を示す補助標識板や試行区間の始まりと終わりを示す矢印の補助標識板が設置されます。また、悪天候や道路工事などによっては試行中でも時速80㎞規制や50㎞規制になることがあるため、規制速度の表示には常に注意しましょう。
進路変更で減速するクルマや大型車など、速度差があるクルマに十分に注意!
試行区間を走行するときは、いくつかの注意点があります。まず、最高速度が上がったからといって時速110㎞で走行する必要はありません。状況に応じた安全な速度で走りましょう。
時速80㎞で走行しているクルマの秒速は約22.2m、時速110㎞では約30.6mです。先行車が時速80㎞、後続車が時速110㎞で走っているとき、車間距離は1秒間に8m以上縮まります。このため十分な車間距離を保つことが大切です。進路を変更する際は、変更先の車線の安全確認をしっかり行いましょう。インターチェンジやサービスエリアの出入口などの付近では、進路変更を行うクルマや速度差が大きいクルマが周囲にいないか十分に気を配ってください。速度差が大きいクルマが前後を走っていた場合、追突してしまうことや、追いついてきたクルマに追突される危険性もあります。
また、前方が渋滞していることも考えられます。速度が上がれば制動距離が延び、ドライバーの視野は狭くなります。速度の出し過ぎは渋滞の最後尾への追突事故や落下物との接触事故の危険も高まるので、これまで以上の注意が必要です。交通事故の衝撃力は、速度と重量に応じて大きくなります。時速100㎞でコンクリート壁に衝突した場合は、ビルの13階程度(約39m)から落ちたのと同じ程度の衝撃を受けますが、時速110㎞ではビルの16階程度(約48m)にもなります。
大型トラックなどの最高速度が据え置かれると、普通自動車との速度差が大きくなることを不安視する意見もあります。これに対して静岡県警察本部では、特定の区間で大型トラックなどの通行帯を指定する交通規制を実施するなどとしています。また、岩手県警察本部では、速度超過や車間距離不保持などの違反者に対する取り締まりや、高速道路交通警察隊のパトロールを強化する方針です。
最高速度が引き上げられた区間を走行する場合、これまで以上に車間距離の保持や周囲のクルマの状況に配慮した運転と、ゆずり合いの気持ちが求められます。
2018年03月現在