[Q]最高出力と最大トルクはなにが違うのですか？

[A]「最大トルク」とは、エンジンが発生する最大の回転力を示すものです。トルクに回転数をかけたものが出力で、最高の値が「最高出力」になります。

• 最高出力は単位にkW、最大トルクはN・mを使用。
• ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも低い回転数で最大トルクを発生。
• 電気自動車のモーターの最大トルクは回転を始めた直後の超低回転で発生。

カタログなどで見かけることの多い「最高出力」と「最大トルク」。これは一体なにを示しているのでしょうか？ 2つの言葉を理解するにはまず、出力とトルクの関係を知ることが重要になります。出力とトルクの関係は「出力＝トルク×回転数」であり、互いに密接に関連しているからです。

自転車にたとえると、ペダルを踏み込む力がトルクです。踏み込む力、つまりトルクが大きいほど自転車はより加速しますから、トルクは加速性能と関係が大きいと言えます。一方の出力は、トルクにペダルの回転数をかけたものなので、出力が大きいほどスピードを出しやすくなります。つまり、出力は速度と関係が大きい指標です。

出力とトルクの出方は、下の図のように、ガソリンエンジンかディーゼルエンジンかによって特徴が異なります。ガソリンエンジンは、全体的にディーゼルエンジンよりもトルクが小さめで、最大トルクが出る回転数も高めですが、高い回転数まで回せるため最高出力を上げやすく、最高速度も速くなるという特徴があります。一方、ディーゼルエンジンは全体的にトルクが大きく、特に低回転で最大トルクが出るという特徴があるため、発進時などの力強さは、ディーゼルエンジンの方が有利と言えます。

ちなみに電気自動車（EV）のモーターは、回転を始めた直後の超低回転で最大トルクが出て、エンジン以上に高回転まで使えるため、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの良さを兼ね備えています。EVの発進加速が鋭く、その後の速度の伸びも良いのは、このモーターの特徴が大きいとも言えます。

「最高出力」とは、エンジンが発生する最高の出力を示し、単位にはkWを使用します。一方の「最大トルク」とは、エンジンが発生する最大の回転力を示すもので、単位にはN・mを使用します。

これらの単位は、1992年に実施された計量法の改正によって、それまでの単位から現在使われているSI（国際単位系）に切り替えられました。それ以前は出力はPS、トルクはkgf・mを使うのが一般的でした。

現在のカタログには、まだ両方を併記したものが多いのですが、今後はSI単位系のみに統一される可能性があります。従来の表示から換算する場合は次の係数を掛けて計算します。

出力［1PS = 0.7355kW］
トルク［1kgf・m = 9.80665N・m］

2024年08月現在