[Q]交通事故の刑事責任とはどんなものですか?

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[A]近年、自動車が絡む人身事故に対しては厳罰が求められるようになりました。

  • 自動車運転過失致死傷罪は、懲役7年以下または罰金100万円以下。
  • 危険運転致死傷罪は飲酒や薬物使用、速度超過などによって死傷事故を起こした場合に適用され、懲役15年以下または罰金100万円以下。

近年、自動車が絡む人身事故に対しては厳罰が求められるようになりました。
平成19年以前は、自動車による人身事故は刑法第211条第1項の「業務上過失致死傷罪」が適用されていました。しかし、過失とは到底いえない危険な運転により人を死傷させた事故が相次いだことから、自動車などによる人身事故の罰則強化を求める声が高まりました。自動車運転過失致死傷罪は、刑法の業務上過失致死傷罪から交通事故に関する規定を独立させたもので、最高刑は懲役5年から7年に引き上げられています(刑法211条第1項にも業務上過失致死傷罪がそのまま残り、飛行機事故や船舶事故、医療事故、労災事故が適用対象となります)。
刑法208条の2には、危険運転致死傷罪が設けられています。危険運転致死傷罪もまた厳罰化の一連の流れを受けて平成13年に新設されたものです(平成19年には自動二輪も対象になりました)。具体的には(1)アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行進行を制御することが困難な高速度での走行、(2)進行を制御する技能を有しないでの走行、(3)人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転、(4)赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転など、以上のような運転行為により死傷事故を起こした場合に適応されます。
しかしながら、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」などの立証が困難なケースが少なくないことから、平成19年に自動車運転過失致死傷罪が新設されました。

業務上とは

業務上過失致死傷の“業務”とは、人がその社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う行為で、他人の生命、身体に危害を加える恐れのあるものを言います。そして公私を問わず、また収入や利益をともなうかどうかを問わないとされています。したがって自動車の運転の場合、営業のための運転はもちろん、通勤や買物、食事、レジャーなど営業目的でない運転もすべて業務上とされます。無免許であっても反復継続して運転していれば業務上とみなされます。

過失とは

過失とは「注意義務違反」、いわゆる「不注意」のことを言います。注意義務の内容は、結果(事故発生)に対する予見義務と、結果に対する回避義務とに区別されますが、業務上過失致死傷は事故を起こす危険を予見し、そのような結果を回避すべき義務があるにもかかわらず、注意義務に違反して(すなわち不注意により)事故を起こすことによって成立します。被害者の自殺的な車道へのとび出し行為などの場合には、結果(事故発生)の予見や結果の回避が不可能な場合は「無過失」となる場合もあります。

重過失致死傷とは

運転経験のない者が、たまたま1回だけ自動車を運転したところ、過失により事故を起こし、その結果、人を負傷または死亡させたという場合は、運転者には反復継続して自動車を運転する意思がないので業務上過失致死傷にはなりません。しかし、その運転に重大な過失があれば重過失傷害または重過失致死の刑事責任を負い、その刑は業務上過失致死傷と同じく5年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。重大な過失とは、過失の程度すなわち注意義務違反の程度の著しい場合をいいます。たとえば無免許・酒酔い運転をして、人で混雑する場所に自動車を乗り入れ、しかも前方注視を怠って事故を起こしたような場合は、重大な過失があるとされます。

自動車運転過失致死傷罪 懲役7年以下罰金100万円以下 刑法第二百十一条2 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
危険運転致死傷 懲役15年以下罰金100万円以下 刑法第二百八条の二 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一 年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者 も、同様とする。

2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自 動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で 自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

(参考)業務上過失致死傷等 懲役5年以下罰金100万円以下 刑法第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

2013年02月現在

 

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