バイクの音を楽しむ『名車図鑑』22:BMW R80
R80オーナーのバイクストーリー
「素直に動くバイクがなんだかつまらなく思えてきちゃってね」
クセのあるバイクを乗りこなす楽しみ、それがやっとわかってきたのは、ここ10年間のことだという。
「古い水平対向の2気筒エンジンを持つバイクに乗ってみたくて。一度乗る機会があった時に、自分でも所有したくなったんです。それまでずっと4気筒のマルチエンジンばかり乗り継いできたので、個性あるバイクが欲しくなった。それが入手したきっかけです」
実際に乗ってみるとエンジンは左右水平に動いて身震いし、シャフトドライブのクセは強く、クラッチを繋ぐたびにテールがガクッと上がる。そういった個性が、昔は嫌いだった。
「シャフトなんてと思っていたんですけどね。チェーンの方がいいじゃん、素直でって。
ところがR80のオーナーの話を聞くと、みんなすごく長く乗っている。どこがいいんだろうと最初は不思議だったけど、それだけ飽きないものなんだろうなと実際に自分が乗ってみた時、自然にそう思えました」
そんな彼も今ではすっかりその魅力にハマり、月に2、3度はツーリングを楽しむ。
「街乗りだけじゃ全然物足りないけど、長い距離を乗るとその魅力がわかります。一般道でも高速道路でもずっと股下にエンジンの存在を感じるんですよ。一般道での鼓動感も高速道路で回転を上げた時に直進安定性が高いのもいい。そんな二面性が本当に飽きないです。入手して5年たった今でも、これは手放せないな、と思いますね」
BMWのバイクに乗っているライダーは皆、長い年数乗り続け、10万km以上の長い距離を走っている。その背景には、部品の一つ一つがとても丈夫で丁寧に作られており、車体そのものもオーナーが整備しやすい構造になっていて、アフターパーツも豊富に揃っている、というBMW社の思いやりが見られる。
一つのものを長く大事に使い続けたい、長く使い続けられる物が欲しい、そんなオーナー自身の気持ちがドイツの物作りと共鳴したのかもしれない。
水平対向ニ気筒エンジン

高速道路の走行時など高回転域での直進安定性が高い水平対向二気筒エンジン。一般道で走っている間はその鼓動が常に存在感を主張する。
軽自動車用のバッテリーが使える

バイク用のバッテリーを交換するとなれば1万円前後と値段が張るが、R80は軽自動車用のバッテリーが使えるので4千円~5千円とお得。
車体の両側に燃料コックを装備

燃料コックを車体両側に一つずつ装備しているのでリザーブが2回使える。長距離を旅するライダーには嬉しい機能だ。カチッとした接部も気持ちいい。
エンジン音を視聴する

エンジン形式:空冷4ストロークOHV水平対向2気筒
総排気量:798㎠
全長×全幅×全高:2175mm×795mm×1115mm
車体重量:190kg
最大出力:50ps
最大トルク:5.9kg-m