自転車同士の出会い頭衝突(JAFユーザーテスト)

テスト実施日・諸条件

実施日 2016年8月18日(木)
テスト場所 日本自動車研究所 衝突実験場(茨城県つくば市)
テスト背景 自転車は免許も要らず気軽に乗れるぶん、自分が事故に遭うことを想像する人は少ない。
しかし、事故や転倒の際には、頭部を地面などに強打して、致命的なケガを負う危険性が高い。
そこで、自転車の事故類型で一番多い「出会い頭衝突」を想定した実験で検証した。
テスト内容 母子3人が乗る自転車(幼児2人同乗基準適合車)と男性が乗る自転車が出会い頭衝突した際の頭部損傷基準値(HIC)をヘルメットの有無で比較検証した。
テスト方法 2台の自転車を各台車に設置し、時速20kmで牽引する。
衝突ポイントの直前で台車から切り離して衝突させる。
後席子供ダミーと母親ダミーの頭部にセンサーを設置し、頭部損傷基準値(HIC)を計測した。

想定シチュエーション(出会い頭衝突)

 

ヘルメットあり

ヘルメットなし

テスト結果

後席子供ダミーの「ヘルメットなし」のHICが15,000を超え、「ヘルメットあり」と比べて約17倍もの高い数値になった。衝突された際に進行方向右側に振られた後、逆側への揺り戻しで勢いがつき、地面に頭部が叩きつけられたことで衝撃が大きくなったと思われる。

HIC:頭部損傷基準値。衝突や転倒による衝撃が脳に及ぼす影響度を示す目安。

  • 幼児ではHICが570以上、成人では700以上の場合、頭蓋骨骨折となる可能性がある。
  • HICが700~2,500になると死亡する可能性がある。
  • 母親ダミーはヘルメットの有無にかかわらず、HICは200台だったが、自転車の事故や転倒の形態は状況によって異なるため、受傷部位や衝突対象で結果が変わることがあります。

帝京大学 ちば総合医療センター 脳神経外科 宮本伸哉医師 の解説

「ヘルメットなし」で計測された15,951というHICは非常に高く、現実では頭蓋骨骨折、急性硬膜外血腫、脳挫傷などによって、重度の後遺症もしくは死亡する可能性が高くなります。出会い頭事故でなくても、子供2人を乗せた際の運転はバランスがとりづらく、転倒しやすく危険なので、できるだけ避けるのが賢明です。また、子供を乗せたまま自転車から離れている間に自転車が転倒する事故も多いので注意が必要です。

まとめ

ヘルメットを着用することで、事故や転倒時の頭部の被害を軽減できる

  • 速度が低めの自転車同士の衝突や停止時の転倒でさえ、頭部が地面に叩きつけられる際の衝撃は大きく、ヘルメットを着用していない場合、致命傷になる可能性が高い。
  • ヘルメットは万能ではないが、最も重要な頭部を守るための唯一の安全装備である。
  • 子供は骨の発達が未熟で、より骨折しやすくなるので、必ずヘルメットを着用させる。
  • 自転車事故の原因になる、速度超過や一時停止にも注意して、事故そのものを防ぐことも大切である。
  • ヘルメットは「SGマーク」など安全基準に適合したもので、サイズの合ったものを選びましょう。

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